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外資系戦略コンサルタントの思考と興味

デジタルとビジネスと人の関わりについて、考えごとをしています

『役に立つ一次式』 整数計画法「気まぐれな王女」の50年

レビュー

本書では、オペレーションズ・リサーチの手法の一つである整数計画法の発展について、著者である今野氏自身の研究の歴史と紐付けながら解説されている。数学研究者の世界というのは、僕自身も想像がつかないが、極めて優秀な数学的素養を持つ人たちの集まりであるようだ。大学時代の数学科の卒論発表を聞いた際に、解説された証明が「ちんぷんかんぷん」だったことが思い出すと、頷くほかない…と、納得。

ORって?

さて、聞き慣れないカタカナなので、説明しておきましょう。オペレーションズ・リサーチ(以下、OR)とは、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法である。
(Wikipediaより出典)
ORの大きな目的の一つは、現実の問題を数学によって解決、もしくは最適化すること。いわゆる、証明や数式と格闘するだけではなく、社会人として我々が直面するビジネス上の課題解決に適用できる点を僕自身はけっこう気に入っている。分かりやすい例だと、ナップザック問題が有名かつ理解しやすい。限られた選択肢の中で、ある目的を達成するために最大の効果を得るには、どのような組み合わせにすべきか、という問題を解決できる(数式上の表現とは異なるが、やりたいことはそういうこと)。

本書の内容は、僕のような素人に向けて、ORがどのように育ってきたのか、何故現在になって再度注目を集めてきたのか、という疑問に基本的な答えを与えてくれる。整数計画法については、どのようなものかの概要を知ることもできるだろう。
よって、整数計画法って聞いたことあるけど、何なの? という方は一読してみることをお勧めしたい。さらに詳しい内容に興味がある場合には、だいぶ物足りない内容かと思う。

ビッグデータなのか最適化なのか

昨今、IT業界では「ビッグデータ」という流行語があり、大量に蓄積された構造化/非構造化データを分析し、経営判断の高度化を目指すという一つの方向性が謳われている。これはどちらかというと、統計分析やデータマイニングテキストマイニングといった技術を適用し、大量データ(テラどころか、ペタを超える!)を分析することと、それだけの分析を実現するためのコンピューティング環境を如何にすべきか、という論点で盛り上がっている印象。特に、IT業界人はコンピュータが好きなので、後者が熱いのかもしれない。
一方で、ビジネス側の視点では、企業に分析スキルが備わっておらず高度な分析を実施し、業務へフィードバックするというプロセスが実現できないのではないか? という点が、この手のソリューション普及を妨げる一つの課題ではないかと考えている。それよりも、人間の頭で解決しきれない組み合わせの最適化を解決する方が投資対効果が良いのではないかと、前職でソリューションを検討していた頃に、ずっと考えていた。
データを分析した結果というのは、鉱脈が見つかる場合もあれば、思ったほどの資源は得られない場合もある。もちろん、ORでも実時間以内に計算できない、であるとか解がないという結果になってしまうなど、検証してみなければ分からない点は多々ある。

お金になるのはどちらなのか……。なかなか結論は出ない。
ただし、スマートシティやインテリジェンスな世の中を実現するためには、間違いなくどちらも必要な技術であり、今後も発展していくことは間違いない。

まとめ

こうして考えてみるに、分析・最適化ソリューションというのは改めて実現して効果を出すまでの道のりが険しいな、と思わざるを得ない。とはいえ、そこを打破していくのが人間の力だし、知惠の出しどころ。難しいことを避けていてはイノベーションは産まれない。
実務でORに携わることはしばらくなさそうだが、引き続き、情報にはアンテナを張っておこうと思う。